悪魔城ドラキュラ 年表考察

あくまじょうドラキュラ ねんぴょうこうさつ


明らかに筋が通っていない、現在のドラキュラ公式年表。
…というか、いつの間にか公式でもすっかり腫れ物のような存在になってしまったが。
どのくらい誤りがあるのか、確認する意味も含めて全ての作品を調べてみることにする。

まず、基本として初代「悪魔城ドラキュラ」の設定を最優先に考える。
そして、他の作品を元にしているものは、先に発売された方を優先する。

■ 基本設定
  1. ドラキュラは100年に一度、キリストの力が弱まるころ、邪悪な人間の祈りによって蘇る。
  2. シモン=ベルモンドの100年前は、クリストファー=ベルモンド。
  3. クリストファーの時代に、ドラキュラは一回目の復活を果たした。

※補足
公式としては、聖なる鞭バンパイアキラーを封印の媒体とし、その効力を100年…と考えている(だから、復活はドラキュラを「封印してから100年」の計算)ようだが、そうであれば単純に「定期的に封印の力を更新」しておけば済むはずで、クリストファーの後にドラキュラが復活するような事態はまず起こりえない。
封印は超常的な力であり、その力を操作する術は人間にはなく、できるのは弱まる力の周期に備えておくことくらい(だから、復活はドラキュラの状態に関係なく常に100年周期)…と考えなければ、話はここまでつづくこともないはずである。
もっとも、その「力」や「封印」の内容がまったく分かっていないのが難点ではあるのだが…。


■ 悪魔城ドラキュラ (MSX)

設定面では特に問題なし。
「古城カルパート」という名前が微妙に引っかかるが、特に重大な矛盾とは言えないだろう。

初代でドラキュラが復活した場所は、「町はずれの荒廃した修道院跡」とある。
MSX版では、ドラキュラは「カルパートの塔に封印された」と書かれている。
一見矛盾に思えるかもしれないが、遺骸の現れる場所と封印された場所は同じではないから、問題にはならない。


■ ドラキュラII 呪いの封印

解釈の仕方によっては矛盾になるのだろうが、個人的な見解ではあれはドラキュラではなく、ドラキュラが残した呪いが具現化したものと考える。
ドラキュラが関与してどうこうという話ではなかったのだろう。
終止符が打たれなかったのは………どうしましょう。

エンディングでドラキュラの墓に「1431-76」と刻まれていることから、クリストファーがドラキュラと戦ったのは1576年、シモンがドラキュラと戦ったのが1676年と考えられる。
ただし、キリストの力の周期を合わせて考えると、それぞれ+1〜6年の誤差が発生する(遺骸の性質とキリストの力の周期を考えてみよう)


■ 悪魔城ドラキュラ (アーケード)

ストーリーを含めたほとんどが解説されていないため、検討する余地がない。
唯一分かることといえば、

・ シモン=ベルモンドのお嫁さん(セレナ)

は初代にはいなかったことくらいか。
このシモンは一般に知られたシモンではないという説もあるが、それを証明するものは残されていない。


■ ドラキュラ伝説

クリストファーが主人公ということで、「ドラキュラII」の設定に合わせれば1576年ごろの出来事か。
存在は初代の時点ですでに明かされていたが、矛盾が二点。

・ たびかさなるシモンとドラキュラの対決
・ ドラキュラはこの時代に魔王になった


シモンがドラキュラと戦ったのは「ドラキュラII」を含めても二回だけであり、「たびかさなる」とは言えない。
そして、ドラキュラが一回目の復活を果たすのが、今回のクリストファーの時代。
すなわち、ドラキュラは100年前にすでに魔王となっているわけで、この設定は矛盾している。

続編の「ドラキュラ伝説II」と合わせて、「一回目の復活は「ドラキュラ伝説II」でのことを指す」とする説もあるが、それだと前提である「ドラキュラは100年に一度復活する。そして過去に一度復活した」という初代のストーリーと齟齬が生じるうえに、一回目が15年ではそもそも「100年に一度」の伝説が生まれる土壌がなくなってしまう。


■ 悪魔城伝説

「ドラキュラII」に合わせれば1476年の出来事。
しかし、ストーリーにおいて、

・ シモン=ベルモンドの時代を遡ること100余年

シモンの100年前はクリストファーであり、これは明らかな矛盾である。
ラルフ=C=ベルモンドの「C」がクリストファーを意味するという説もあるが、上記「ドラキュラ伝説」で述べた内容により否定される。
ついでに「語り継がれる伝説の個人名称がミドルネーム(英雄クリストファー伝説)」という不自然さも挙げておく。

「余年」の表記は問題ないが、100年ではなく200年でなければならない。


■ ドラキュラ伝説II

「ドラキュラ伝説」の続編である時点で、すでに矛盾を含んでいる。
他に、

・ 15年(1591年ごろか)で復活

遺骸の点では問題ないが(使われてもいないが)、キリストの力の周期の問題がある。
ただし、「肉体は滅んだが、封印まではされなかった」…つまり、「封印さえされなければ条件次第でいつでも復活できる」という新たな設定が作られたため、矛盾ではなくなった。
「英雄クリストファー伝説」となって語り継がれるような偉業の割にこの失態は大きいが、復活したドラキュラを相手にするのはクリストファーが初めてとなることを考えれば、無理もないことだったのかもしれない。
むしろ大失態をかましたうえに、引退間近の父親を立ち上がらせ、挙句尻拭いまでさせたソレイユが後継者として歓迎されている点を不自然に感じる。


■ 悪魔城ドラキュラ (スーパーファミコン)

基本的には初代と同じだが、

・ 過去に幾度となく、魔王はあらゆる形でこの世に復活した

という一文が微妙。
シモンの時代から考えれば、ドラキュラが復活した回数は一回のみ。
「あらゆる形で」が何を意味するのかは分からないが、それでも「幾度となく」は矛盾していると言える。


■ 悪魔城ドラキュラ (X68000)

初代と一字一句違わないストーリー。
何の問題もないうえに、シリーズトップレベルのすばらしい出来という優等生。
完璧です。


■ 悪魔城ドラキュラX 血の輪廻

ドラキュラ伯爵。

・ 年齢推定800歳

1431年から約800年後。つまり「血の輪廻」の時代は2276年ごろということに。
かなり微妙ではあるが、「こんな2276年はあり得ない!」という確たる根拠もない。
矛盾とまでは言えないが、納得できるものでもないか。


■ VAMPIRE KILLER

キンシー=モリスがドラキュラを倒したのが1897年。
しかも「終止符が打たれ、永遠の眠りについた」とまで豪語されている。
それでも復活する時点でかなり迷走している印象を受けるが、この作品の最後の展開には「?」と疑問に思うプレイヤーも多いことだろう。
果たして今回復活したのはドラキュラだったのか。
個人的にはエリザベートが集めた人間の魂を、配下のドロテアが奪って怪物化した、というような展開に思えるのだが…。
憶測ついでに言うと、人間の魂を集めれば復活させられるとエリザベートに吹き込んだのもドロテアだったりするのではないだろうか。
そして自分は配下のふりをして、チャンスを虎視眈々と狙っていたのではないか…?
ただ、エンディングではしっかり「DRACULA」と書かれているので、この可能性は低いか。

あれが単純にドラキュラだとしたら、年代も含めて大きな矛盾になる。


■ 悪魔城ドラキュラXX

「血の輪廻」と同じく、

・ ドラキュラの推定年齢800歳

「シモンの時代より数百年」ということだが、計算するとその間は600年になる。
間違いではないが、これだとシモンの名が出てくる意味が分からない(もっと近い年代のベルモンドが書かれていた方が自然)

「血の輪廻」ともども、「推定」なのでいくらでも言い訳はできると思うが。


■ 悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲

まずは設定から。

・ ドラキュラの復活が5年
・ ドラキュラの目的は人間への復讐(私怨)


「血の輪廻」のエンディングから想像するに、再び「ドラキュラ伝説II」のような状況(封印できずに逃げられた)になったと考えられる。
その失態は仕方ないとしても、今回は遺骸の存在の問題がある。
5年ではドラキュラの遺骸はまだ復活していないため、ドラキュラが姿を現すことはできないはずである。
地上ではない場所(魔界?)であれば、現実の肉体は必要としない…ということなのかもしれないが、その辺りはあいまいである。

復讐の件に関しては明らかにおかしく、人間への復讐に燃えるドラキュラが人間の手を借りなければ復活できないというのだからもう話にならない。
そもそも最初の動機は単純に「世界を混沌に陥れて支配すること」であった。

今度は「悪魔城伝説」と比べた場合、

・ 1797年
・ アルカードは人間と吸血鬼のハーフ(その他、外見諸々を含む)


復活の周期はドラキュラが滅びてからの計算ではなく、常に一定したものでなければならない。
すなわち、1700年代であるのならば、リヒターがドラキュラを倒したのは1776年(+1〜6)の範囲。

アルカードは元人間であり、父親に強制的に悪魔と契約させられて吸血鬼になったのである。
そもそもハーフだとしたら、「悪魔そのものと言える」ドラキュラと、「聖母のような」リサが結婚。
そしてドラキュラが魔王になったのは人間に妻を殺されたことに対する復讐。
設定がぜんぜん噛み合っていない。

最後に「血の輪廻」と比べた場合、

・ 1797年

「血の輪廻」は設定上2276年(+1〜6)にならざるを得ないので、この年代は間違い。


明らかに矛盾だらけだ。


■ 悪魔城ドラキュラ 漆黒たる前奏曲

・ ベルモンドとドラキュラの因縁の始まり

「悪魔城伝説」の二十数年前ならば、まだドラキュラもアルカードも人間であるはず。
アルカードに至ってはアルカードですらない。アドリアンだ。
実際にはドラキュラは人外の化け物に変身し、アドリアンはコウモリ変化を繰り出してくる。
その後、二十数年の間にベルモンド家は恐れられ、ひっそりと暮らすようになり、そして伝説と化す。
いくらなんでもこれは早すぎる。

そして、矛盾にはならないがラルフの父親が彼。
今までのベルモンド家の戦いを全て無に還すような設定である…。
ただし、「悪魔城伝説」の設定で考えれば、彼はそのときはまだ人間なのでラルフに闇の力が混じることはなく、純粋な人間である。


■ 悪魔城ドラキュラ黙示録

・ 1852年

100年周期で考えれば、このズレは発生しない。
1876年(+1〜6)の範囲内が正しい。
ただし、ドラキュラは今回、今までになかった新たな策を発動させる。
それにより、長年に渡ってドラキュラの自由を封じてきた「キリストの力」を凌駕した可能性はある。

ドラキュラの推定年齢は500歳。
1431年から考えると、少しズレが大きすぎるか。


■ 悪魔城ドラキュラ黙示録外伝

・ 1844年
・ ドラキュラの復活の儀式


コーネルが「復活はまだ先のはずだ」と言っていた。
計算上では30年以上も前になる。
このことをコーネルが知っていたとすると、この時代にこれまでの常識を覆すような大きな変化が起こった、ということなのだろうか?

また、復活の儀式は本来なら人間の手によって行われるはずである。
もっとも、今回は従来の儀式とは異なっていたようなので、部下がやらざるを得ない状況にあったのかもしれないが。


■ 悪魔城ドラキュラ Circle of the Moon

・ 1830年

10年前にネイサンの両親とモーリスによって封印された、とあるから、1820年が封印された年。
1776年(+1〜6)から1820年まで、40年以上に渡って戦いがつづいたと考えるのはさすがに無理か。

そして復活。
「封印された」と書かれている以上、10年で復活する可能性はまずない。
もし可能性があるとすれば、それはドラキュラが復活してから90年間、地上に存続しつづけた場合だけである。



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