Castlevania Lords of Shadow
The Art of Castlevania: Lords of Shadow 序章日本語訳
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「The Art of Castlevania: Lords of Shadow」は、「Lords of Shadow」三部作のアートワークを収録した、23.75cm×30.86cm、192ページ、34.95US$の見た目も中身も値段も豪華な画集です(日本未発売)
もちろんアートワークがメインですが、それまで日本で制作されてきたシリーズがどのようにして海外のMarcurySteamと結びついたのか。また、再構築に際しての苦労や発売までの経緯など、様々な裏話や解説も見どころの一つです。
当然ながら内容は全て英語で書かれているため、個人的な備忘録として、一番情報量の多い序章部分のみ日本語化しました。まあ、九割翻訳ソフトですけど。
かなり長めですが、興味があったら一読ください。
ただし、訳の正確さの判断には自信がありませんし、ところどころ意訳をつけたりばっさり削ったりもしていますので、原文で読みたい方は是非実物をご覧ください。 |
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ISBN: 9781781168950
Published by Titan Books |
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■序章
1986年に発売されたコナミの『Castlevania(悪魔城ドラキュラ)』は、当時の他のゲームにはない独特な雰囲気を持っていた。
それは、勇敢なヒーロー シモン・ベルモンドが城の冷たい石床を踏みしめ、異形の怪物に襲われながら暗闇を探検する、リアルさとダークさがあったことだ。
この雰囲気はそれ以降も作品の中心となり、シリーズは刺激的で、時には奇妙な方向へと枝分かれしていった。
しかし、『Castlevania』が25周年を迎えようとしていたとき、シリーズは低迷していた。
その四半世紀の間に、コナミが30種類以上もの作品を生み出していたことを考えれば、当然のことなのかもしれない。
コナミに入社したデイブ・コックスは、『Castlevania』の代表作の一つである『Symphony of the Night(月下の夜想曲)』の制作に携わっていたこともあり、「新作が出るたびに、売り上げはどんどん落ちていった」と語る。
「非常に少数のコアなファンにしかアピールできていないと感じていましたが、そのコアなファンを満足させることも難しくなっていました。まさに八方塞がりだったのです」
『Castlevania』には、新たな方向性とビジョン…つまり完全な再構築が必要だった。
コナミは、それが中途半端な方法ではできないことを分かっていた。
この新しい『Castlevania』に指針はなく、コナミの全世界のチームが、伝統的なシリーズを復活させるためのあらゆるアイデアを提案するように求められた。
それを聞いたコックスは、まだプレイステーション2が主流だった時代に、スペインの小さなデベロッパー(制作会社)と会ったときのことを思い出した。
「彼らが訪ねてきたのですが、その技術力を見て、これは本当に素晴らしいと思いました。彼らのエンジン(プログラム)、シェーディング、すべてが素晴らしいのです」
エンリック・アルバレスが率いるMercurySteamは、幻想的な世界やダークな世界を手掛けてきたデベロッパーだった。
スタジオとしての最初の作品である『Scrapland』は軽快なSFスペクタクルで、最も有名な『Clive Barker's Jericho』は、ホラーテイストに加えてビジュアルとサウンドの絶妙な不気味さでオリジナル色を打ち出したFPS(一人称視点のシューティングゲーム)だった。
これらの素質は、『Castlevania』の世界にうってつけだとコックスは確信していた。
「私が手を挙げて、最初に電話したのはエンリックでした」とコックスは振り返る。
「そして、そのエンジンを使って、プレイアブルなもの、デモ、ビデオ、あるいはエンジン技術を紹介するものを作って、上層部に売り込むことができないかと持ちかけたのです」
コナミの経営陣は、日本から離れたことのないシリーズのための、新しい革新的なビジョンをどのように受け止めるだろうか?
−−−−−
『Castlevania』の世界を再構築したMercurySteamの最初のデモは、最終的にたどり着くものとは対照的に、伝統的なものだった。
緻密に作られた石造物を雨が流れ落ち、グールが死体に群がる城門から始まる。
シリーズの初代主人公であるシモン・ベルモンドが決意を持って城の前に立つ姿は、技術的にも雰囲気的にも特筆すべき見所となっている。
これは、コナミが新しい『Castlevania』の方向性を決める第一歩となった。
「いろいろな意味で恐ろしかった」とコックスは言う。
「まず第一に、アメリカ人と日本人、さらに私たち(欧米人)が参加していたこと。そしてもちろん、大きな遺産があることです。私たちがコナミで働いていたとしても、ちょっとした部外者のように感じられ、常に自分たちをアピールしなければなりません。プロジェクトに何十億ドルもの投資をしてほしいと説得しなければならないのです。これは非常に困難なことですが、幸運にも、私たちのプロジェクトは強力でした」
アルバレスはこの話を受けたとき、コックスの自信とは反対に期待はしていなかった。
「正直、無理だと思っていました。パブリッシャー(販売会社)とデベロッパーの関係でよくあることですが、いろいろなことを話し合っても、最終的に実現するのは1%程度です。最初の数ヶ月、この話をしていたときは非常に懐疑的でした」
最初のビジョンの説得力はその1%を手にし、コナミがMercurySteamにプロトタイプの許可を出すのに十分なものだった。
しかし、コナミはそれ以上のもの、これまでの『Castlevania』を超えるものを求めていた。
「当時の私の印象は、コナミは『Castlevania』を再び看板タイトルにしたいと考えていたようでした。そのためには必ずしも従来の伝統を踏襲する必要はなく、まったく違ったものになるかもしれません」
「コナミからの提案でまず驚いたのは、ストーリーやゲーム性、環境部門などについて、シリーズであれば当然あるはずの大量の制限をまったくかけてこなかったことです」とアルバレスは振り返る。
「彼らは私たちのビジョンを求めていたのです」
アルバレスのビジョンは、『Castlevania』をよりキャラクターに特化したものにすることだった。
それは、『Castlevania』の基本理念を尊重する一方で、シリーズに組み込まれていた多くの要素を排除するものだった。
「私はストーリー重視の人間です。ですから、強いキャラクターのゲームを楽しみます。強いキャラクターがいれば、良いストーリーが生まれると思うからです。だからまず、非常に強いキャラクターを作って、ストーリーを完全に再構築しようと思いました」
シリーズ初登場のガブリエル・ベルモンドがその原動力となり、彼の最終的な運命は『Castlevania』が大切にしてきた多くのものに杭を打ち込むことになった。
「昔の『Castlevania』シリーズから、いくつかの単語や参考資料を使いました。しかし、それ以外はすべてをやり直しました」とアルバレスは言う。
「最初の『Lords of Shadow』では、あらゆるレベルで作品全体を再構築することが最大の目標でした。ストーリー、ゲーム性、そして舞台設定。それが、制作全体を通しての指針となりました。特に、何もない最初の段階では、すべてを手探りで進めなければなりませんでした」
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最初のプレゼンで信頼を得たMercurySteamは、デモの骨組みに肉と皮を付けたプロトタイプの制作に取り掛かった。
そして2007年11月。許可が下りてからわずか数ヶ月後、コックスは日本に戻り、この新しい『Castlevania』を、ゲームを見たことのある管理職だけでなく、開発チーム、そして『Castlevania』のゲームを作った人たちがいる会場で披露し、2回目のプレゼンを行った。
その中には、『メタルギアソリッド』シリーズの生みの親として知られる小島秀夫も出席していた。
コナミの中でも最も知名度が高く、信頼できる人物の一人である小島は、プレゼンの後、コックスと酒を酌み交わしながら、この斬新なビジョンをどう思うかを伝えた。
「このプロジェクトを彼はとても褒めてくれました」とコックスは言う。
「プレゼンの後、彼は私のところに来て、ぜひ協力したい、何かできることがあれば言ってくれ、と申し出てくれました」
小島の後ろ盾があり、彼の名前がゲームに付くことで、伝統的な日本のシリーズを手がけるにあたり、欧米のデベロッパーだけでは決して得られない支援を受けることができた。
「私たちはまだ実績を上げていませんでした」とコックスは言う。
「誰がこれを運営するのか、誰がこの制作をコントロールするのか、多くのスタッフが心配していました。自分たちだけでやるのか、それともHQ(コナミ)の責任者が上につくのか。彼が手を挙げてくれたおかげで安心できました。彼は基本的にドアを開け放って、私たちがゲームを作りたいように作れる環境を与えてくれたのです。迷いは消え、心置きなく制作に打ち込めるようになりました。よかったのは、彼が私たちのアイデアを気に入ってくれたことです。彼は私たちが型にはまったやり方ではなく、新しいことに挑戦している姿勢をとても評価してくれました」
小島もコナミも協力的だったが、まだ多くのファンを納得させるという難題が残されていた。
MercurySteamのビジョンがファンにどれだけ受け入れられるのか、不安は当然あった。
そこで、最初はMercurySteamのゲームの意図を完全には明かさずに発表することにした。
『Lords of Shadow』(仮題)と名付けられつつも、中世の民話に彩られた世界、伝説の十字架を手にした主人公、敵を切り裂く鞭など、シリーズおなじみの要素が散りばめられたダークファンタジーは、非常に良い反応を得ることができた。
手ごたえを感じて興奮したが、本当の戦いはこれからだ。
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その後、『Lords of Shadow』は正式に『Castlevania』の名を冠することで、多くの人が羨むような伝統を手に入れた。
しかし、それには期待の重さと、熱心なファンからの厳しい視線も伴っている。
小島(プロダクション)の名前はおおよそ好意的に受け入れられたが、25年をかけて築いてきた『Castlevania』のコアなファンの不安を解消するまでには至らなかった。
「知名度やブランド力、ゲームを応援してくれるファン、自分のやっていることを支持してくれるファンがいるという点では、助かっています」とコックスは語る一方で、裏表があることも認めている。
「声の大きいファンが多いので、新しいことをするのはとても難しい。再構築を望まない人は常に少数派で、彼らを満足させることはできませんし、彼らを取り込もうとしたり、迎合しようとしても、実際にはうまくいかないこともあります。私が学んだことは、自分の直感や感情に従うこと、自分が正しいと思うことをすること、そして、彼らがついてきてくれることを願うことです」
多くのファンは、MercurySteamによる再構築を満足して迎え入れた。
2010年に発売された『Castlevania: Lords of Shadow』は、これまでのシリーズにはない売上を記録し、数多くの賞も獲得するなど高い評価を得た。
コックスと彼のチームは、『Lords of Shadow』が歴代の『Castlevania』の中で最も成功を収めた作品となったことを知らされた。
「発売当初はインターネット上の否定的な書き込みを見て、私たちは失敗したのかと落胆したが、3ヶ月後のミーティングではみんなが称賛してくれた。インターネット上の少数の声高な人たちと、実際にゲームを買ってくれた人たちとの違いを目の当たりにして、とても興味深かった」
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最初の『Lords of Shadow』の成功はすぐには実感できなかったが、コックスはMercurySteamとの仕事を続けたいと考えていたので、それに続くポータブル版のスピンオフというアイデアはとても魅力的に映った。
『Castlevania』の原点である横スクロールアクションに戻ることができ、また、ニンテンドー3DS向けのゲーム制作にかかる費用が少なく済むため、比較的簡単に、より短期間で出すことができた。
MercurySteamが『Mirror of Fate(宿命の魔鏡)』というスピンオフ作品を制作している間に、コナミは『Lords of Shadow』のストレートな続編の提案を出してきた。
制作者たちが失敗するのではないかと心配していたゲームが、思いもよらず三部作として花開いたのだ。
このような展開は予想していなかったが、ガブリエルの物語を完結させるためのアイデアは用意されていた。
「運と偶然の産物でもありましたが、ストーリーは出来上がっていたんです」とコックスは言う。
「最初はもう二度と作れないと思っていましたが、これは正念場だと思った。こうなったら、やりたいことをとことんやり遂げよう。ここで終わったらみんな失業してしまう。頑張ろう!」
『Lords of Shadow』の壮大なストーリーの最後には、ガブリエルの運命を明らかにするエピローグがあり、MercurySteamが機会があれば『Castlevania』をどのようにしたいかを示唆している。
「そのときはまだ具体的な形にはなっていませんでしたが、それは常に存在していて、デザインミーティングでも話していました。私たちは、新しいことをするかしないかではなく、"こうするつもりだ"と示そうと考えました」
『Lords of Shadow 2』は、ドラキュラを主人公とし、時間軸を現代に移したことで、オリジナルの『Castlevania』のテンプレートからさらに一歩を踏み出し、シリーズを再構築しようとするMercurySteamの取り組みに新たな革命をもたらした。
これは新たな出発であると同時に、『Castlevania』の名に栄光をもたらし、これまでのゲームと同様に豊かな個性と雰囲気を持つゲームを作り出そうとする試みでもあった。
三年という短い期間で、MercurySteamの復活劇は完成に近づいている。
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「愛されているシリーズに誰かが入ってきて、自分のカラーを付けるのは難しいことだと思います」とコックスは振り返る。
「私はオリジナル作品に対する他の人の解釈を見るのが好きです。ですから、こうでなければいけないという考えはありません。キャラクターが進化したり、変化したり、予想外のことをするのを見るのは面白いです」
「『Castlevania』のような長い歴史を持つシリーズは、常に前進する必要があると思います。立ち止まっていては死んでしまう。シリーズは進化し、変化し、そのたびに新しい命を得てきたが、その後はそれから遠ざかり、マンネリ化してしまったのだと思います」
『Lords of Shadow』は、『Castlevania』シリーズを現代の超大作にふさわしい、アクション性に富んだ華麗な作品に再構築した。
しかし、『Castlevania』の素晴らしさは常に身近なところにある。
「ファンに愛されているシリーズの核となるものを維持しなければなりません。私にとっては異形の生き物と戦う一人の男の話でしたが、その核となる考え方、音楽、ゲームをプレイしたときに感じた壮大な感覚を維持しなければなりません。主人公がドラキュラを倒すために城に乗り込む、その雰囲気です。それが当時の私を魅了したものであり、『Lords of Shadow』でもそれを表現しようと思いました」
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シモン・ベルモンドの最初の戦いから27年。
MercurySteamのサーガは終焉を迎え、『Castlevania』に新たな血統が加わり、再び夜の闇を見ることができるようになった。
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